うどんで発電?! うどんが再生エネルギーの未来を拓く!

香川県では年間のうどん用小麦粉使用量が約59,643t(平成21年農林水産省調べ)と、2位の埼玉県を約2倍強も引き離す堂々の全国第1位。うどんに対する1世帯あたりの年間支出も、全国平均の約2倍(平成24年総務省調べ)で、これは1人あたりが2日に1食はうどんを食べている計算になります。最近では「うどん県」が香川県の代名詞になるほど。
うどんを離乳食(地元の赤ちゃん用語で「ぴっぴ」と呼ばれる)にし、うどん打ち麺棒を嫁入り道具に入れる家庭もあるほど、香川県民とは切り離せない食文化、うどん。しかし、この多くの人に愛されるうどんを作る工程には、どうしても残渣(廃棄されるロス部分)が生まれてしまう問題がありました。捨てられるだけの残渣は、もったいない、何とか環境対策に役立てる方法はないかと立ち上がった人たちがいました。

  • 1.うどん県ならではの悩み
  • 2.うどんを使ってバイオマス発電
  • 3.収支が見込める環境活動
  • 4.環境に優しいうどん作りの循環
  • 5.環境への意識を地元の誇りとして広げたい
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  • 1.うどん県ならではの悩み

    香川県のうどん屋(製麺所タイプ)の数は、うどんを扱う食堂を除いても850軒を超えると言われています。軒数では減少傾向にあるものの、店舗の大規模化が進んでいるので、うどんの消費・生産量に陰りはありません。こうした地産地消のうどんに対し、もっと環境面について考えようと結成されたのが、地元企業の方々を中心とする「うどんまるごと循環プロジェクト」コンソーシアムです。
    その立ち上げメンバーの一人が、さぬき麺業株式会社代表取締役の香川政明さん。

    「プロジェクトがはじまる前から、施設の生徒さんたちに手伝ってもらって、うどん店が出す割り箸を回収し、和紙を作っていました。自然環境や社会の恩恵に対して少しでも恩返しをしたいと思ったのがきっかけです。」(香川社長)

    割り箸のリサイクルに次いで、香川社長らが着目したのが、うどんの生産における残渣の再利用。足踏みなど伝統の製法にこだわるさぬき麺業の讃岐うどんは、機械に頼らない分、その工程でどうしてもロス部分が出来てしまうのです。また、麺はゆがいて30分で老化してしまうため、商品とならず廃棄せざるを得ない場合があります。この残渣は7つの店舗と工場を持つ、さぬき麺業だけでも年間150tの量に及ぶのだそうです。

    「残渣は農家の人に肥料として使ってもらっていましたが、産廃業者の引取りには年間で450万円もの費用がかかっていました。」(香川社長)

    この課題は、さぬき麺業だけでなく、香川県でうどん店を営む人が抱える大きな悩みの種なのです。

  • 2.うどんを使ってバイオマス発電

    高松市内でプラントの研究・開発・制作を手がける株式会社ちよだ製作所の「うどんまるごと循環プロジェクト」への参加が廃棄うどんの再利用に新たな光明をもたらしました。ちよだ製作所は、産業技術総合研究所の新型酵母(うどん酵母)からバイオエタノールを生産するシステムの開発に携わった実績を生かし、その技術を利用した小型プラントを自社で開発したのです。

    「バイオエタノールは、温暖化対策として世界でもガソリンの代替燃料と注目を集める資源エネルギー。その価値は再生可能なことにあります。ただし、その装置の製作や維持に費用がかかってしまうため、残念ながら中小企業向けの普及は見込めないのが現状でした。」(ちよだ製作所技術開発営業・尾嵜哲夫さん)

    バイオエタノールを活用するだけでは、事業化することはできない。しかし尾嵜さんら、ちよだ製作所の研究メンバーは、その生成の過程で出るメタンガスに着目し、廃棄うどんから電気を作るバイオマス発電を完成させたのです。

  • 3.収支が見込める環境活動

    代替エネルギーが脚光を浴びるいま、自然環境に優しい再生可能エネルギー発電への注目が集まっています。2012年より、太陽光・風力・水力・バイオマス・地熱を使った発電への固定価格買い取り制度が開始され、大規模太陽光発電所の建設や洋上風力、農山村での小水力発電は着実に広がりを見せています。しかし、メタンガスを使ったバイオマス発電の普及は進んでいません。こうした現状について、ちよだ製作所代表取締役池津英二さんが今後の展望を語ってくれました。

    「中小企業が売電収入を見込むには建設に必要な実績データが少なく、これまでは採算を度外視した参入への勇気が必要でした。私たちのバイオマス発電がいいモデルケースになり、普及してくれれば。」(池津社長)

    現在、うどんまるごと循環プロジェクトで行っているバイオマス発電では、テーブルマーク株式会社(旧加ト吉)の冷凍うどん工場や前述のさぬき麺業をはじめとする地元のうどん店からの廃棄うどんを2~3日間で1500kgほど回収するなどして発電を行い、四国電力へ安定した電力供給を行っています。それによる収入は1kw/39円で、年間約650万円にもなっています。

    「環境に優しい究極のリサイクル」であるバイオマス発電が、中小企業の環境ビジネスの取り組みへの糸口となれば、日本のエネルギー事情は大きく変わるかも知れません」(池津社長)

  • 4.環境に優しいうどん作りの循環

    捨てられるうどんによるエタノールの生成と、その工程を利用したメタンガス発酵による発電。さらに、ちよだ製作所では、メタンガスの発酵残渣から、窒素を中心とした良質な液体肥料の生成にも成功しています。これはうどん用小麦や薬味となるネギなどの栽培に使い、新しいうどんを作ることに役立てられています。

    ちよだ製作所の尾嵜さんは、このシステムを自然の恩恵を持続的に受け、また継続循環させていく地産地消の理想的な姿だと、自らのプロジェクトの発展性を語ります。

    「割り箸のリサイクル、うどんによる代替エネルギー、うどん発電、うどんの肥料化。これは、“うどん県”に住む私たちだからこそのプロジェクトですが、メタン発電は有機性のものなら何にでも応用できますので、新たな環境対策・環境ビジネスとして、全国で展開していきたいです。」(尾嵜さん)

    これまでの取り組みだけでなく、これからの取り組みについても、日々会議を繰り返しているという「うどんまるごと循環プロジェクト」コンソーシアム。自分たちが住む地域の問題としてだけでなく、常に全国を念頭に環境問題を考えています。

  • 5.環境への意識を地元の誇りとして広げたい

    「うどんまるごと循環プロジェクト」の発足当初は、地元住民の環境への意識は決して高くなかったのだそうです。廃棄うどんや割り箸の回収も非協力的に扱われることもあったのだとか。しかし、セミナーやセッションの開催を繰り返し、地元学校などへの講習、教育DVDづくりを行うなど、複数のNPOや自治体の協力も得て「うどんまるごと循環プロジェクト」コンソーシアムの皆さんの努力が実を結び、環境への関心は着実に高まっているそうです。

    「選ぶなら、環境にいい方を選ぶ。とっても簡単なことですが、できるようになったのは、最近のような気がします。今後は、この気持ちを定着させ、広げていかなきゃいけないと感じています。」(香川社長)

    香川社長は、讃岐うどんという伝統にこだわり、誇りを持つように、香川の環境にこだわりと誇りを持ちたいと語ってくれました。